休職者の復職支援とは?会社が押さえたい対応と職場定着のポイント
休職していた社員から、「そろそろ復職したいと思います」
と連絡があったとき、会社はどのように対応すべきでしょうか。
多くの会社では、
「診断書が出たから大丈夫だろう」
「本人も働きたいと言っているから問題ないだろう」
と考えがちです。
もちろん、主治医の意見や本人の意欲は重要です。
しかし、復職支援は単に職場へ戻すことが目的ではありません。
本当に大切なのは、復職後も無理なく働き続けられる状態をつくることです。
今回は実際の復職支援事例をもとに、復職後の定着を見据えた支援のポイントについて解説します。
なぜ復職支援が難しいのか
休職に至る背景は人によって異なります。
✔ メンタル不調
✔ 長時間労働
✔ 人間関係の問題
✔ 家庭環境の変化
✔ 業務負担の増加
など、さまざまな要因が関係しています。
また、復職支援が難しいのは、本人・医療機関・会社がそれぞれ異なる視点で復職を考えているためです。
本人は「早く職場へ戻りたい」と考えます。
医師は医療面から就労可能かを判断します。
会社は、これらの情報に実際の業務を継続して遂行できる状態かどうかを加えて判断しなければなりません。
そのため、「就労可の診断書が出たら復職」という単純な話ではありません。
特にメンタル不調による休職では、復職直後は働けていても、
その後体調を崩して再休職につながるケースもあります。
だからこそ、復職後の定着まで見据えた支援が必要になります。

実際にあった復職支援の事例
ある会社で、メンタル不調により長期間休職している社員がいました。
主治医からは、「復職可能」との診断書が出ていました。
本人も早く職場へ戻りたいと考えていました。
しかし会社は、すぐにフルタイム勤務へ戻すのではなく、まずは
✔ 本人との面談
✔ 主治医との情報共有
✔ 業務内容の整理
✔ 段階的な勤務計画
を行いました。
その結果、まずは1日4時間の短時間勤務として、比較的負荷の少ない業務を担当してもらうことにしました。
そしてその後、体調や業務状況を確認しながら勤務時間を延ばし、担当業務も段階的に拡大していきました。
定期的に医師の診断を受けながら進めた結果、約半年かけて復職前の状態へ復帰することができました。
フルタイムへ復職後、本人からは「実は最初から通常勤務へ戻るのは不安だった」という声も聞けました。
この事例は、復職支援の目的が「出社すること」ではなく「職場への再定着」であることを示しています。
主治医の診断書だけで判断しない
復職対応では「復職可能の診断書があるから大丈夫」という考え方が多くみられます。
もちろん医師の判断は重要です。
しかし医師が把握しているのは、基本的には医療面の情報のみです。
一方で会社は、
・社員の具体的な業務内容やその役割・責任の範囲
・社員がおかれている職場の環境
・社員と上司との関係
・労働日数や時間数などの勤務状況
を把握しています。
会社は社員に「労働契約に基づいて業務を遂行してもらう」必要がありますので、
医療面の意見だけでなく、実際に担当する業務や勤務条件も踏まえて復職可能かを検討する必要があります。
復職支援で重要なポイント
① 本人との十分なコミュニケーション
復職支援では、本人とのコミュニケーションが重要です。
- 睡眠や食事などはきちんととれているか
- 業務中は、業務に集中できているか
- 不安要素はないか
「面談」という形ではなくても、本人との話の中で状況を聞き取ります。
また本人の同意を得たうえで、ご家族から自宅での様子を共有いただくこともあります。
② 業務内容を整理する
復職直後から以前と同じ業務を担当できるとは限りません。
場合によっては、
- 業務量を減らす
- 担当範囲を限定する
- サポート体制を作る
などをおこない、徐々に復職前の業務に戻していくことも必要です。
③ 定期的なフォロー
復職はスタート地点です。
復帰後も定期的に面談を行うことが大切です。
- 業務負荷
- 体調変化
- 職場での困りごと
復職前の業務内容などに戻るまでは、できれば月1回は面談の場を設けます。
本人の言葉だけではなく、表情や様子も大切な確認ポイントです。
復職支援で会社が失敗しやすいポイント
急いで元の状態に戻そうとする
職場で人手不足が続いていると、「早く戦力になってほしい」
と、周りの社員の期待が強くなります。
また本人も「休職したから職場に迷惑をかけた」という思いから、
無理に頑張る、という状況が起こりがちです。
しかし無理な復帰は、再休職または退職というリスクを高めます。
本人任せにしてしまう
「何かあったら言ってください」だけでは十分でありません。
前段のように、「休職で周囲に迷惑をかけた」という思いを持つ人は、
自分の意見が言いにくくなることがあります。
「仕事の状況はどうですか?」
「体調などは問題ありませんか?」
など、会社からも随時声をかけるなど、状況を確認することが重要です。
管理職へ情報共有していない
復職者を支えるのは現場の管理職です。
管理職が状況を理解していなければ、適切なフォローは難しくなります。
・医師の意見や、元の業務や役割に戻るプロセス
・本人との面談などからの業務に関する内容
・配慮が必要なこと、期間やその間の業務対応
・会社での定期的なミーティングや報告
必要に応じて、これらの内容を管理職と共有する必要があります。
何の情報も説明もないままでは、現場も管理職もどのようにすればいいか分からず、
結果として、周囲のスタッフの不満、本人の不安、現場の混乱を招きかねません。

社労士として感じること
復職支援の相談を受ける中で感じるのは、
「復職できるか」
ばかりに注目してしまう会社が少なくないということです。
しかし実際には、復職して「元の業務、役割に戻って再定着できるか」ということの方が重要です。
復職支援は、状況も病状も個々に異なるため、個人に寄り添って考えていくことが必要です。
しかし、安心して働き続けられる環境を整えることができれば、本人にとっても会社にとっても、
現在だけではなく未来に向けて大きなプラスになります。
また周囲のスタッフも、このような会社の姿勢をみていますので、その影響はとても大きいものです。
もし、復職することだけをゴールにしてしまうと、再休職や離職につながることもあります。
私は復職支援とは、
本人・会社・医療機関が連携しながら、安心して働き続けられる状態をつくるための取り組みだと考えています。
自社で確認したいポイント
□ 復職判定の基準が曖昧になっている
□ 主治医の診断書だけで判断している
□ 復職後の面談をしていない
□ 管理職へ情報共有をしていない
□ 復職後はすぐ元の業務、役割に戻している
□ 復職してもすぐに退職してしまう
□ 復職後は医師の意見は聞いていない
一つでも当てはまる場合は、復職支援体制を見直す余地があるかもしれません。
復職対応で悩む会社の多くは、復職判定の基準が明確になっていません。
休職制度や復職判定の流れを就業規則や運用ルールで整理しておくことで、
判断に迷う場面を減らすことができます。
まとめ
復職支援は、単に職場へ戻すことが目的ではありません。
重要なのは、復職後も働き続けられる環境を整えることです。そのためには、
- 本人との面談
- 主治医との連携
- 業務調整
- 段階的な復職
- 継続的なフォロー
これらのことが必要になることもあります。
復職したら終わりではなく、安心して働き続けられるまで支援することが、
結果として会社と従業員の双方を守ることにつながります。
復職対応は、社員の健康と会社の運営の両方に関わる重要なテーマです。
判断を急ぐのではなく、現在の復職ルールやフォロー体制が自社に合っているか、
一度確認してみてはいかがでしょうか。
組織の状態を一度、整理しませんか?
伴走支援は、相性と覚悟が大切です。
まずは現状を整理するところから始めましょう。
■ あわせて読みたい
<参考リンク>
・兵庫県社会保険労務士会(公式サイト)
https://www.sr-hyogo.gr.jp/
・全国社会保険労務士会連合会(公式サイト)
https://www.shakaihokenroumushi.jp/
・厚生労働省 働き方改革特設サイト
https://hatarakikatakaikaku.mhlw.go.jp/

