ハラスメントと言われたら会社はどう対応する?初動対応のポイントを解説

「パワハラを受けました」

ある日突然、このような相談を受けたらどう対応するでしょうか。

近年はハラスメントに対する社会的な関心も高まり、会社としての適切な対応が求められています。
しかし実際の相談では、
 ・どう対応していいか分からないまま時間が過ぎた
 ・とりあえず謝罪した
 ・本人の話だけを信じてしまった
 ・「あなたも悪かったんじゃないの?」と、相談者に言った。
といったケースも少なくありません。

ハラスメント対応で最も重要なのは「初動対応」です。
会社が行うべきことは、感情的な判断や発言、ましてや決めつけることではありません。

今回は実際にあった事例をもとに、ハラスメントと言われたときの初動対応について解説します。

ハラスメントの相談を受けて初動対応について説明する社労士

ハラスメント対応で最も重要なのは初動対応

ハラスメントの相談を受けると、多くの経営者や管理職は戸惑います。
特に、
 「本当にパワハラだったのか」
 「指導の範囲ではないのか」
 「あの社員がまさか」
と判断に悩むこともあります。

ただし、この段階で結論を出す必要はありません。

むしろ危険なのは、
 ✔ すぐに加害者扱いする
 ✔ 相談者の話を否定する
 ✔ 調査をしない
という対応です。

会社はまず中立的な立場で事実を確認しなければなりません。


実際にあったハラスメント申立ての事例

ある会社で、経理の実務経験が5年あるとして採用された経理社員がいました。
しかし入社から6か月ほど経った頃、その社員から
 「上司からパワハラを受けている」
という申立てがありました。

会社はまず、事実関係を確認するために、
 ✔ 本人への聞き取り
 ✔ 上司への聞き取り
 ✔ 周囲の従業員への聞き取り
 ✔ 当時の状況や経緯の確認
を行いました。

調査の結果、次のことが分かりました。

  • 本人が経験者として採用された業務について、知識や対応に不十分な点があった
  • 指摘された内容は、経験者であれば理解していることが期待されるレベルだった
  • 同じ注意が繰り返されたため、上司の言葉が徐々に厳しくなっていた
  • 上司の指導方法や言葉遣いは、他の従業員に対する指導と大きな違いはなかった

これらを総合的に検討した結果、会社はこの事案はパワーハラスメントには該当しないと判断しました。
ただし、業務指導であっても言葉が強くなり過ぎることは望ましくありません。
そこで上司には口頭注意を行い、全従業員を対象としたハラスメント研修も実施しました。

この事例で大切なのは、

申立てがあったからといって、直ちにハラスメントと決まるわけではない
またハラスメントではないという結論の中にも、注意すべき点はある

ということです。

ハラスメントかどうかは、当事者の主張だけでは判断できません。
だからこそ、周囲への聞き取りや事実確認を行い、客観的に調査することが重要になります。

最初にやるべきこと① ハラスメント対応の流れを説明する

相談があったときは、まず相談者にハラスメント対応の流れを説明します。

相談受付 → 詳細聞き取り → 調査 → 会社の判断 → 結果に対する措置

大切なことは、大きな流れを相談者に理解してもらうことです。

そのうえで、そのまま相談内容の聞き取りをしてもいいのか、日や場所を改める方が良いのか、
別の相談窓口、担当者の紹介が必要か、などの確認をします。

「相談したい」ということを、まずは直属の上司などに伝えるケースはよくありますが、
実際の相談内容は、例えば人事担当者や相談窓口にしたい、ということもあります。
その場合は、本人が希望する担当者などに話をつなげます。

ここで重要なことは、
 ・無理に内容を聞き出そうとしない
 ・「相談に来た」ということを第三者に話さない
 ・自分に相談内容を言わないからと、放置しない
 ・「そんな相談には対応できない」などと勝手に発言しない
ということです。

特に「相談に来た」ことを、周囲には知られたくないというケースもあります。
不用意な発言が、他のトラブルにつながることもありますので注意です。



最初にやるべきこと② 相談内容をしっかり聞く

相談があったときは、相談者の話を丁寧に聞きます。
ここで大切なのは、正しいか間違っているかを判断することではありません。

まずは、
 ・いつ、どこで
 ・誰が誰に対して
 ・何を言ったのか、何をしたのか、何をされたのか
 ・相談者の要望
を確認します。

「相談者の要望」とは、匿名の相談か、解決を希望するか、相手にどうしてほしいか、自分がどうしたいか、
などの内容で、きちんと聞き取りをしておかなければ、別のトラブルにつながります。

また、相談者が安心して話せる環境や相談窓口を作ることも重要です。


最初にやるべきこと③ 記録を残す

聞き取りなどの調査を行ったら必ず記録を残します。
実務では、後から
 「言った」
 「言わない」
でトラブルになるケースもあります。

そのため、
 ・相談日時、対応者
 ・相談内容、聞き取り内容
 ・対応経過
を、整理しておくことが重要です。

これは問題社員対応や労務トラブル対応にも共通する考え方です。


最初にやるべきこと④ 相談者以外の人の話も確認する

ハラスメント対応でよくある失敗が、
申立てを受けた時点で結論を出してしまうことです。
しかし、公平な結論を出すためには、相談者以外の人の話も確認する必要があります。
「相談者以外」とは、当事者の相手方はもちろん、他の従業員のことをいいます。

実際には、
 ・事実認識の違い
 ・コミュニケーション不足
 ・指導内容の誤解
が原因になっているケースもあります。

そのため、一方の話だけで判断してはいけません。
また、匿名相談などを希望しているときで、会社としては調査する場合は特に注意が必要です。


ハラスメントと指導は何が違うのか

現場では、
 「注意したらパワハラと言われそうで怖い」
という声を聞くことがあります。確かに難しい問題です。

しかし、適切な業務指導までできなくなると、組織運営に支障が出ます。
重要なのは、
 ✔ 業務上必要な指導か
 ✔ 指導内容が適切か
 ✔ 指導方法が適切か
という点です。

人格否定や威圧的な言動はいけませんが、業務改善のための適切な指導まで否定されるわけではありません。

厚生労働省のパワーハラスメントの考え方では、
 「業務上必要かつ相当な範囲を超えた言動」
であるかどうかが重要な判断要素になります。

同じ言動でも、業務改善を目的とした適切な範囲なのか、業務を超えた感情的な叱責なのかによって評価が変わります。
そのため、一つの発言だけではなく、背景や継続性も含めて判断することが必要です。

この考え方は、「パワハラと言われる前に会社がやるべき対応とは?判断基準と予防策を解説」もご参照ください。


ハラスメント調査における事実確認の重要性を説明する社労士

やってはいけない対応

相談者を否定する

相談を受けていると、
 「気にしすぎでは?」
 「それくらい普通だよ」
 「そういうつもりじゃないと思うよ」
と言いたくなることもあります。

しかし相談時に、相談者を否定するような対応は避けるべきです。
まずは、”じっくり話を聞く”姿勢が重要です。


加害者扱いする

反対に、調査前から相手を悪者扱いすることも問題です。

 「それはひどいよね」
 「そんなこと言われたら辛いよね」
 「他でも問題があった人だから・・・」

相談中にこのような対応をすると、まだ結論が出ていないのに
「これはハラスメントだった」と誤解を与えかねません。

相談対応には、常に中立的な姿勢を保つ必要があります。


調査をしない

相談を受けただけで終わるケースもあります。
本人の希望であれば構いませんが、通常は解決を望んで相談するケースが多くあります。

この時に、調査を行わなければ会社として適切な対応をしたとは言えません。
ハラスメント相談の放置は、別のトラブルにもつながりかねません

調査に時間がかかりそうなときや、時間がかかっているときなどは、その状況を相談者にも伝えながら、
誠実に対応していくことが重要です。


社労士として感じること

ハラスメント対応で重要なのは、「これはハラスメントなのか」を急いで判断することではありません。
まずは事実を整理し、公平な立場で確認することです。

また実際のハラスメント相談では、判断などだけではなく、別の課題が見えてくることがあります。
例えば、
 ・指導内容そのものには問題がなかった
 ・伝え方に改善が必要だった
 ・お互いの認識に大きなズレがあった
 ・職場全体のコミュニケーション不足が背景にあった
といったケースです。

私自身、ハラスメント相談の場面では、いきなり結論を出そうとするのではなく、
まず事実を整理することを大切にしています。

当事者同士の認識が異なっているケースもあれば、指導方法に課題があるケース、
職場全体の運営に原因があるケースもあります。
だからこそ、一つひとつの事実を確認しながら進めることが重要だと感じています。

また、ハラスメント対応で慌てる会社の多くは、相談体制や調査手順が明確になっていません。
 ・誰が相談を受けるのか。
 ・どのような流れで調査するのか。
 ・記録はどのように残すのか。

こうした対応手順をあらかじめ整理し、見える化しておくことで、
担当者によって対応が変わるリスクを減らすことができます。

ハラスメント対応は、問題が起きたときの対応だけではなく、
問題が起きても落ち着いて対応できる仕組みを作っておくことが大切だと感じています。


自社で確認したいポイント

次の項目に当てはまる場合は注意が必要です。

□ ハラスメント相談の受け方が決まっていない

□ 調査の進め方が決まっていない

□ 聞き取りなどの記録を残していない

□ 管理職教育を行っていない

□ ハラスメント研修を実施したことがない

□ ハラスメント発生時の対応ルールが就業規則などに規定されていない

一つでも当てはまる場合は、事前準備を見直す余地があるかもしれません。


まとめ

ハラスメントと言われたとき、会社が最初に行うべきことは事実確認です。

相談者の話をしっかり聞き、記録を残し、相談者以外の人の話も確認しながら、
公平な調査を行い、総合的に判断します。

ハラスメント対応でも、感情ではなく対応手順が大切です。
問題が発生してから慌てるのではなく、普段から相談体制や調査体制を整えておくことが、
職場を守ることにつながります。


このままで大丈夫?を確認する

ハラスメント対応は、実際に問題が起きたときだけではなく、普段から相談体制やルールを整備しておくことが大切です。
 ・相談窓口は決まっていますか。
 ・調査の進め方や記録の残し方は整理されていますか。
 ・就業規則や社内ルールは現在の実態に合っていますか。

まずは自社の状況を確認するところから始めてみてください。
当事務所では、就業規則の整備だけではなく、実際に運用できる仕組みづくりまで伴走支援しています。

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■あわせて読みたい

<参考リンク>
・兵庫県社会保険労務士会(公式サイト)
 https://www.sr-hyogo.gr.jp/

・全国社会保険労務士会連合会(公式サイト)
 https://www.shakaihokenroumushi.jp/

・厚生労働省 働き方改革特設サイト
 https://hatarakikatakaikaku.mhlw.go.jp/