採用ミスマッチは面接だけでは防げません

「経験者を採用したはずなのに、思っていた業務が任せられない」

このような採用の悩みは、中小企業からよく相談を受けるテーマの一つです。

採用活動では、面接に力を入れている会社が多いと思います。
しかし実際には、面接だけで応募者の能力や適性を正確に判断することは簡単ではありません。

採用ミスマッチは、教育コストや採用コストが無駄になるだけでなく、
既存社員の負担増加や、組織全体の生産性低下にもつながります。

今回は実際の相談事例をもとに、採用ミスマッチが起こる原因と、中小企業が取り組みやすい改善策について解説します。

採用面接を行う担当者と応募者


採用ミスマッチはなぜ起こるのか

採用ミスマッチというと、
 「見抜けなかった会社が悪い」
 「応募者が経歴を誇張していた」
という話になりがちです。

しかし実際には、どちらか一方だけが原因ではありません。
会社側と応募者側の認識にズレがあることで発生するケースが多くあります。

例えば、
・求人票の内容が曖昧で、応募者の誤解を招いた
・面接で具体的な業務内容を、十分説明していなかった
・前職経験について、具体的な確認が不十分だった
・入社後に期待する役割を共有していなかった
というケースです。

採用活動は「選ぶ」ではなく、「お互いの理解を一致させる」と考えることが大切です。


実際にあった採用ミスマッチの事例

以前相談を受けた企業では、給与計算の経験者として応募してきた方を採用しました。
履歴書には給与計算業務の経験が記載されており、面接でも経験者として評価されていました。

ところが、入社後に業務を任せてみると状況が違いました。
その方が前職で担当していたのは、設定されたシステムへの入力作業が中心だったのです。

つまり、給与計算の仕組みそのものを理解していたわけではなく、
 ・残業単価の算出
 ・手当の取り扱い
 ・社会保険や税金の検算
などの、実務経験や知識がほとんどありませんでした。

もちろん応募の際に社員が嘘をついていたわけではありません。
しかし、この会社では給与システムを使用していたものの、給与計算後の検算や内容確認も担当業務に含まれていたため、
この社員は業務に対応できず、最終的に退職することになりました。

このケースは、会社と応募者の双方が「給与計算」という業務について具体的な説明や確認を行わず、
「給与計算の経験がある」ということで判断してしまったため起こったミスマッチです。

これは採用活動で非常によく起こるミスマッチです。
同じ「業務」でも、その方法、ルールや内容は、会社によって全く違います
これを一致させないままで採用すると、結局は会社も社員もミスマッチが起こります。

採用広告費や教育コスト、現場社員のフォロー時間なども含めると、
採用ミスマッチによる影響は決して小さくありません。


経験者採用ほど注意が必要

意外かもしれませんが、経験者採用の方がミスマッチが起こりやすいです。

未経験者の採用の場合は、教育前提で採用するため、会社も準備ができています。
一方で経験者採用の場合は、自社の業務担当者を想像して「これくらいはできるはず」と判断してしまいます。

しかし、同じ業務でも会社が違えば、その業務内容は全く違います。
 ・担当していた業務や責任の範囲
 ・具体的な業務内容や作業方法
 ・使用していたシステムと作業の範囲
 ・管理職経験の有無
などを、具体的に確認しなければ、ミスマッチが起こります。

採用時に必要なのは職種名の確認ではなく、
「どのような作業内容で、どこまで自分で対応していたのか」
を具体的に確認することが重要です。


面接だけに頼ると判断を誤りやすい

面接は重要です。しかし、面接には限界もあります。

短時間の会話だけで、
・実務能力
・職場への適応力
・コミュニケーション能力
・問題解決力
を、正確に判断することは難しいからです。

また、面接担当者によって判断基準が異なるケースも少なくありません。

以前の記事「採用面接で『言ってはいけない一言』とは?入社後のトラブルを防ぐための実務ポイント」
でも解説したように、面接時の認識のズレは入社後のトラブルにつながります。

採用の成否は、面接だけで決まるものではありません。

応募者を多面的に評価する採用担当者


採用ミスマッチを減らすための3つのポイント

① 求める人物像を”見える化”する

採用活動の前に、
 ✔ どのような業務を任せたいのか
 ✔ どこまでできればよいのか
 ✔ どのような働き方を期待するのか
 ✔ 将来どのような業務や役割を担ってほしいのか
を整理する必要があります。

実は採用がうまくいかない企業ほど、この部分が曖昧なことがあります。
求める人物像が曖昧なままでは、採用基準も曖昧になってしまいます。


② 業務内容を具体的に伝える

「事務職募集」
「経験者歓迎」
だけでは、業務内容や求める人物像が十分に伝わりません。

具体的な仕事内容や求められる役割を伝えることで、応募者側も自分が適しているか判断しやすくなります。
そして、これが採用のミスマッチを防ぎ、職場の定着率向上にもつながります。


③ 面接以外の確認方法を取り入れる

例えば、
 ・実際に作業をする実技試験
 ・ケーススタディ形式の事例試験
 ・実際にタイピングなどをする技能試験
 ・保有資格などによる知識確認
などがあります。

特にパソコンや機械などを使用する業務は、実技・技能試験を取り入れることで、
応募者のレベルが分かります。

面接だけの場合でも、「エクセルを仕事で使用したことがある」ではなく、
 ・どのような関数を業務で使用していたか
 ・自分で一から関数設定ができるか
 ・エクセルはどのような業務で、どのようにして使っていたか
など、具体的な内容で確認することで、お互いの理解が一致します。


試用期間を有効に活用する

試用期間は会社が応募者を見極める期間であると同時に、応募者が会社や業務を理解する期間でもあります。

ところが「経験者だから大丈夫だろう」と、きちんと評価をせず、放置してしまうケースがあります。
そして、そろそろ試用期間が満了する、というときに、現場に確認してみると、
「本採用は難しいのではないか」という返事が返ってきます。

しかし、それまでに業務などへの注意をしておらず、その結果、
・指導記録が残っていない
・改善機会を与えていない
という状態になり、トラブルになることがあります。

試用期間中の面談やフィードバックは、応募者にとってもミスマッチの早期発見にも役立ちます
また試用期間で判断がつかないときは、試用期間を延長する、という方法も考えられます。


社労士として感じること

採用ミスマッチの相談では、「面接で見抜けなかった」という言葉をよく耳にします。

しかし、採用は面接担当者の勘や経験だけに頼るものではありません。大切なのは、
 ・求める人材を整理する
 ・業務内容を明確にする
 ・評価基準を統一する
 ・入社後も継続して確認する
という仕組みを作ることです。

人事制度や労務管理と同じように、採用活動も”見える化”が重要です。

採用がうまくいく会社は、特別な面接技術を持っているわけではありません。
採用から定着までの流れを整理し、継続的に改善しています。
その積み重ねが結果としてミスマッチの減少につながるのだと思います。


まとめ

採用ミスマッチは面接だけが原因ではありません。
・求人内容の曖昧さ
・業務内容の説明不足
・評価基準の不統一
・入社後のフォロー不足
など、採用プロセス全体に原因が隠れていることがあります。

特に中小企業では、一人採用する影響が大きいため、採用のミスマッチが組織全体へ及ぶこともあります。
まずは自社の採用活動について、「採用だけを判断する仕組み」ではなく、
「採用から定着までを見据えた仕組み」になっているかを見直してみてはいかがでしょうか。



採用ミスマッチは、採用担当者個人の判断だけの問題ではなく、採用プロセス全体の設計に原因がある場合が少なくありません。
もし、
・採用しても定着しない
・求める人材が採用できない
・面接基準が担当者ごとに違う
といった課題がある場合は、一度採用の流れを整理してみることをおすすめします。
やまと社会保険労務士事務所では、採用から定着までを見据えた仕組みづくりや運用改善の支援を行っています。

悩みの深層を”見える化”し、次の行動へつなげる経営者セッション

経営者が抱えている “言葉にしづらい” 組織・人の課題。
伴走型社労士のセッションは、対話と傾聴を通じて、
経営者自身が本質的な課題に気づき、内発的に動き出せる”仕組み”をつくることを目的としています。

就業規則、人事制度、労務トラブル…… テーマが曖昧でも大丈夫。
話しながら一緒に「本当に向き合うべき課題」を見つけていく時間です。
本セッションは、伴走支援を前提とした”入口設計”ですが、単発のご依頼も可能です。

■ あわせて読みたい

    <参考リンク>
    ・兵庫県社会保険労務士会(公式サイト)
     https://www.sr-hyogo.gr.jp/

    ・全国社会保険労務士会連合会(公式サイト)
     https://www.shakaihokenroumushi.jp/

    ・厚生労働省 働き方改革特設サイト
     https://hatarakikatakaikaku.mhlw.go.jp/