採用面接で「言ってはいけない一言」とは?入社後のトラブルを防ぐための実務ポイント

「面接では良い人だと思ったのに、入社後に話が違うと言われた」
「会社としてそんな約束をしたつもりはなかった」

採用に関する相談の中で、このような話を聞くことがあります。
採用面接は会社が応募者を見極める場であると同時に、応募者が会社を見極める場でもあります。
そのため、面接時の説明内容は非常に重要です。

特に中小企業では、社長や現場責任者が面接を担当することが多く、
悪気のない一言が後々のトラブルにつながるケースも少なくありません。

今回は実際にあった事例をもとに、採用面接で注意したい発言や、
採用ミスマッチを防ぐためのポイントについて解説します。

採用面接で応募者へ説明を行う面接担当者


面接での何気ない一言がトラブルにつながることがあります

こんな発言には注意

  • 「勤務シフトは入社後に相談できますよ」
  • 「頑張ればすぐ昇給できます」
  • 「残業はほとんどありません」
  • 「休みは柔軟に取れます」

採用面接では、”応募者に良い印象を持ってもらいたい”という気持ちから、
つい前向きな表現を使ってしまうことがあります。

もちろん、事実に基づく説明であれば問題ありません。
しかし、具体的な条件や制度を確認せずに話した場合、応募者はそれを会社の約束として受け取る可能性があります。

面接担当者にそのつもりがなくても、後から認識の違いが発生すると、
「面接で聞いていた話と違う」というトラブルにつながります。


実際にあった説明不足によるトラブル

ある会社での採用面接の事例です。

応募者から勤務条件について質問がありました。その際、面接担当者は、
「勤務条件の変更も相談できますよ」と回答しました。

担当者としては、「会社の状況や変更の程度、本人の勤務状況によっては相談に応じることもある」
という程度の意味
でした。

ところが応募者は、「入社後に勤務条件を自由に変更できる」と理解していました。

その後、入社して間もなく勤務時間や勤務条件の変更を求められましたが、
会社として対応できる内容ではありませんでした。

結果として、「面接時に説明された内容と違う」という不満が生じ、関係が悪化してしまいました。
会社側にも応募者側にも悪意はありませんでしたが、曖昧な説明が原因で起きたトラブルでした。


問題は“嘘”ではなく“曖昧さ”

採用面接で問題になるのは、必ずしも故意の嘘とは限りません。実際には、
 「良かれと思って話した」
 「深く考えずに答えた」
 「その場の雰囲気で説明した」
というケースが多く見られます。

しかし採用面接の場では、応募者は会社からの説明を重要な判断材料として、”言葉通り”に受け取ります。そのため、

  • 曖昧な表現
  • 個人的な見解
  • 実際には決まっていない内容

については、慎重な説明が必要です。
特に労働条件に関する内容は、後のトラブルに直結しやすいため注意が必要です。


採用面接で特に注意したい項目

労働時間と残業

残業時間の程度を説明する場合でも、
 ・繁忙期の残業時間は何時間くらいか
 ・平均残業時間はどのくらいか
を、具体的に伝えることが大切です。

「残業は少ない」という説明は、Aさんは「月10時間くらい」と想像するかもしれませんし、
Bさんは「繁忙期の1~2ヶ月程度だけ」と受け取るかもしれません。

人によって認識が異なるような曖昧な説明は、入社後の不満につながります。


給与や昇給

「頑張ればすぐ昇給できる」という説明も要注意です。

どのような基準で昇給するのかが明確でなければ、応募者は過度な期待を持つかもしれません。
評価制度によるものか、一定の実働実績によるものか、など具体的に説明することが重要です。

なお評価制度があっても運用が伴わなければ意味がないという点は、既存記事の
「人事評価制度が失敗した理由|中小企業で多い3つの原因と改善策」でも解説しています。


勤務地や業務内容

 「あなたの経験を活かしてください」
 「別の仕事も経験できます」
という説明も誤解を招く場合があります。

経験者採用でも、業務のルールや進め方は会社ごとに違います。
「経験を活かす」は、今まで経験した他社のルールで仕事をすること、と受け取られかねません。
会社が違っても同じルールで良いことと、違うルールで行うことなど、具体的な説明が必要です。

また異動や配置転換の可能性があるなら、本人の希望が考慮されるのか、希望申請に一定の在職期間が必要なのか、
定期的に希望申請できるのか、何か基準があるのかなど、その条件や考え方を事前に説明しておくことが大切です。


休日や働き方

有給休暇の取得状況や休日出勤の有無なども、実態に即して具体的に説明する必要があります。

特に、勤務時間や休日をシフト制としている場合、本人の休日希望がどのくらい考慮されるのか、
土日祝日は必ず勤務か、交代で休みが取れるのか、なども具体的に説明します。

”理想論”ではなく、実際の運用を伝えることが信頼につながります。
また正しく働き方を理解した上での採用は、結果的に早期退職も防止できます。

採用条件を確認しながら面接を行う様子


採用ミスマッチにならない会社の共通点

採用がうまくいく会社には共通点があります。それは、

良い面だけでなく現実も説明していること

例えば、

  • 具体的な繁忙時期や、その時の業務内容や残業の程度
  • 入社後すぐは覚えることが多いことや、入社半年くらいまでの具体的な業務内容
  • マニュアルの有無や、ルール変更がどのくらいあるか
  • 少人数の場合は、一人当たりの担当範囲や、属人的な業務があるかどうか

といった内容も正直に説明しています。
一見すると応募者が減りそうに思えるかもしれません。

しかし実際には、事前に認識を合わせることで入社後のミスマッチが減り、結果として定着につながるケースが多くあります。

採用活動は「採用すること」がゴールではありません。
入社後に活躍し、長く働いてもらうことが本当の目的です。


面接担当者ごとに説明が違う会社は要注意

もう一つ注意したいのが、面接担当者ごとに説明内容が異なるケースです。
 ・社長
 ・部門責任者
 ・現場社員

それぞれが別々の説明をすると、応募者は混乱します。そのため、

  • 必ず説明する内容
  • 回答できる範囲
  • 持ち帰るべき質問

を整理しておくことが重要です。
これは採用活動の見える化ともいえます。

人によって説明内容が変わる状態は、将来的なトラブルの原因になります。


社労士として感じること

採用トラブルは、採用後に発生するのではなく、実際には面接の段階ですでに始まっていることがあります。

面接担当者は、「良い人材を採りたい」
という気持ちが強くなると、つい会社の魅力を中心に話してしまいます。

しかし、本当に大切なのは期待を高めることではなく、認識を合わせることです。
採用面接は会社が選ぶ場であると同時に、応募者に正しく理解してもらう場でもあります。

そのため、面接時の説明内容や質問への回答方法を整理しておくことは、
結果的に採用の成功率と定着率を高めることにつながります。

また、面接時の説明と労働条件通知書の内容が一致しているか確認することも重要です。


まとめ

採用面接での何気ない一言が、入社後のトラブルにつながることがあります。特に、

  • 労働条件
  • 給与
  • 昇給
  • 業務内容
  • 勤務時間

については、曖昧な説明を避けることが重要です。
面接では、応募者に良い面だけを伝えるのではなく、実際の働き方や会社の状況を正しく説明することが大切です。

採用面接は採用のスタート地点です。
入社後のトラブルを防ぐためにも、「何を説明するか」だけでなく、
「どのように説明するか」を見直してみてはいかがでしょうか。


採用の悩みは、面接の場面だけで解決できるものではありません。
求人内容、採用基準、面接方法、入社後の育成まで含めて考えることで、採用ミスマッチの防止につながります。
もし採用後の定着や面接での説明方法に課題を感じている場合は、一度自社の採用プロセス全体を見直してみることをおすすめします。

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■あわせて読みたい

<参考リンク>
・兵庫県社会保険労務士会(公式サイト)
 https://www.sr-hyogo.gr.jp/

・全国社会保険労務士会連合会(公式サイト)
 https://www.shakaihokenroumushi.jp/

・厚生労働省 働き方改革特設サイト
 https://hatarakikatakaikaku.mhlw.go.jp/