「規程」と「現場」がズレていると、何が起こるのか
~皆勤手当の事例から考える就業規則の落とし穴~

就業規則や給与規程についてご相談を受けていると、
「規程に書いてある内容」と「実際の運用」が食い違っているケースに、しばしば出会います。
今回は、その中でも実際にあった皆勤手当の事例をご紹介しながら、
就業規則・給与規程を“会社のルール”として持つことの重要性についてお伝えします。
給与規程と実際の支給額が一致していなかった事例

ある企業で給与規程を確認していたときのことです。
皆勤手当の条文と、実際の給与計算を見比べていると、一部の社員について
規程に書かれている金額と、実際に支給されている皆勤手当の額が一致していない
ことが分かりました。
社長に確認すると、
「その人だけは、こういう理由があって金額を変えている」
という説明があり、その理由自体は、話を聞けば理解できる内容でした。
しかし問題は、「理解できる理由があるかどうか」ではありません。
規定と違う扱いをするなら、例外規定が必要
給与規程は、
・どの手当を
・どの条件で
・いくら支払うのか
をあらかじめ定めた会社のルールです。
もし、特定の条件に該当する場合に
「通常とは異なる扱いをする」「金額を変える」
のであれば、その内容は例外として規程に明記されていなければなりません。
ところが、その会社の給与規程には、
皆勤手当についての例外規定は一切なく、結果として
”規程通りに支払われていない状態”になっていました。
この場合、原則としては
規定通りに支払う必要がある
という結論になります。
就業規則や給与規程は作成するだけではなく、実際の運用と一致していることが重要です。
規程と運用のズレがなぜ問題になるのかについては、「就業規則と見える化の関係:どこをどう整えるべきか」でも解説しています。
「皆勤手当は払わなければならないのか?」という疑問
この点を社長にお伝えすると、次に出てきたのがこんな言葉でした。
「そもそも、皆勤手当は支払う必要があるんですか?」
「給与規程は社労士に任せていたので、正直よく知りません」
気持ちはよく分かります。
確かに、法律上
「皆勤手当を支給しなければならない」
という決まりはありません。
しかし、問題は法律がどうかではなく、
会社自身が何をルールとして定めているかです。
給与規程は「会社が決めたルール」
皆勤手当の支給義務が法律で定められていなくても、
給与規程に「皆勤手当を支給する」と書いてあれば、それは会社の約束になります。
その約束を、
・人によって変える
・社長の判断で調整する
・理由はあるが規程に書いていない
という状態で運用していると、
後になって
「それはおかしい」 「自分も同じ扱いを受けるべきではないか」
といったトラブルにつながる可能性があります。
また、給与規程を社労士が作成していたとしても、
それはあくまで作成をサポートしただけであり、
規程の内容に責任を持つのは会社です。
トラブルが起きたときに
「社長は知らなかった」
という言い訳は、残念ながら通用しません。
よくある「同じ根っこ」の問題
これは一例ですが、同じような状況は決して珍しくありません。
例えば、次のようなケースです。
✔ 知り合いの会社の就業規則をそのまま使っている
✔ インターネットで見つけた就業規則のひな型を、そのまま導入した
✔ 創業時に作ったまま、一度も見直していない
これらの場合、
「今の会社の実態」と「規程の内容」がズレている可能性が非常に高いと言えます。
そして、そのズレは普段は表に出ませんが、
問題が起きたときに、突然大きなリスクとして表面化します。
就業規則を作成したまま放置している状態は、多くの労務トラブルの原因になります。
形だけの就業規則がもたらすリスクについては、「形だけの就業規則が招く労務トラブルと改善ポイント」も参考にしてください。
「伴走社労士」という関わり方だからできること
今回の皆勤手当の事例のように、
「規程と実際の運用がズレている」問題は、
単に就業規則や給与規程を作っただけでは防げません。
重要なのは、
今の会社の状況を見ながら、必要に応じて調整し続けることです。
私は、就業規則や給与規程を
「作って終わり」にするのではなく、
経営者と一緒に考え、確認し、必要に応じて修正していく
**「伴走社労士」**としての関わりを大切にしています。

規程のズレは、経営者が悪いわけではない
実務の現場では、
✔ 忙しくて細かい規程まで確認できない
✔ 昔決めたルールが、今の実態と合わなくなっている
✔ 担当者任せになっていて、気づいたら運用が変わっていた
といったことは、ごく自然に起こります。
特に、中小企業では
「悪気はない」「合理的な理由がある」
というケースがほとんどです。
だからこそ、
第三者として定期的に確認し、整理する役割が必要になります。
伴走社労士がいることのメリット
伴走型で関わる社労士がいることで、次のようなメリットがあります。
- 今の運用と規程が合っているかを定期的に確認できる
- 社長の「頭の中のルール」を文章として整理できる
- 例外対応をするなら、どこをどう書けばよいかが明確になる
- トラブルになる前に、リスクに気づける
つまり、
問題が起きてから対応するのではなく、問題が起きにくい状態を作る
ことができます。
また継続的な見直しや改善を進めるためには、課題整理から運用・振り返りまでを繰り返すことが重要です。
「伴走支援を成功させるためのチェックポイント」でも詳しく紹介しています。
就業規則は「経営判断を楽にするツール」
就業規則や給与規程は、
「縛られるもの」「難しいもの」ではなく、
経営判断を楽にするためのツールです。
・これは規程通りに対応すべきか
・今回は例外にするべきか
・ルール自体を見直すべきタイミングか
こうした判断を、
一人で抱え込まず、相談しながら進められる存在がいることで、
経営者の負担は大きく減ります。
「知らなかった」では済まないからこそ
今回の事例でもお伝えした通り、
就業規則や給与規程について
「社長は知らなかった」
という言い訳は通用しません。
だからこそ、
一緒に内容を確認し、会社に合った形に整え続ける
伴走社労士の存在が意味を持ちます。
もし、
「うちの規程、今の運用と合っているだろうか?」
と感じることがあれば、
それは見直しのサインかもしれません。
規程と運用のズレは、普段は見えにくいものです。しかし、
・就業規則を長期間見直していない
・例外対応が増えている
・実際の運用と規程が一致しているか分からない
という状態であれば、一度現状を整理してみることをおすすめします。
ルールと運用を一致させることで、将来の労務トラブル予防につながります。
このままで大丈夫?を確認する
“もしもの時”に会社を守れる就業規則かどうか、今こそ点検を。
御社の状況に合わせて、ムリなく改善できる方法をご提案します。
■あわせて読みたい
<参考リンク>
・兵庫県社会保険労務士会(公式サイト)
https://www.sr-hyogo.gr.jp/
・全国社会保険労務士会連合会(公式サイト)
https://www.shakaihokenroumushi.jp/
・厚生労働省 働き方改革特設サイト
https://hatarakikatakaikaku.mhlw.go.jp/

